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ご自宅で飲める、日本全国の名酒8選!その1

グルメ

三千櫻


岐阜県中津川市 三千櫻酒造


◉酒蔵を岐阜県中津川市から北海道東川町に移転。その、舞台裏とは?

三千櫻酒造さんは、素晴らしい酒造りの蔵を持つことで知られており、この度、日本酒業界を大きく震撼させたことで話題となり、岐阜県の中津川にて創業さ れて145年、長い間「三千櫻」ブランドを守り続けてきました。

蔵の老朽化と 昨今の温暖化の影響により、地元地域での酒米を作るのが困難となり、以前から蔵の移設を検討していたそうです。 そして、この度、三千櫻酒造は北海道東川町に新たに移転し、日本初の試みとして、公設民営型の形態で行われ、町と共同で実現しました。

黄色いラベルの酒は「ななつぼし」という酒米ではない飯米のお米を使用しています。最初は「ななつぼしで美味しい日本酒ができるのか?」と思いましたが、実際に試してみるとその素晴らしい味わいに驚き、早速取引を希望し、蔵に連絡を取り、蔵からは「ぜひ一度うちに見学に来てください」とのお言葉があって、私たちは東川町へと向かいました。

2021年5月の後半に訪問し、蔵は田んぼの中にぽつんと佇み、特に驚いたのはその田んぼを流れる水路の水量の豊富さです。社長曰く水の豊かさは日本一だと思うとの事で、大雪山の伏流水が地下で循環し、東川町では100%地下水を使用しているため、水道代がかからず、また岐阜の頃は水質は軟水を使用していましたが、現在は中硬水となっているそうです。

また、上川町では酒米を栽培していなかったのですが、公設民営とJA(農業協同組合)の協力により、新たな酒米「彗星」の米を栽培することになり、この取り組みにより公設民 営、町、JA、そして酒蔵が連携して町おこしに取り組んでいます。

今後は設備を整備し、成長を続ける予定だそうです。規模は小さいですが、今後の酒造にも多いに注目しています。

また、赤色のラベルの酒についてですが、「愛山」というお米を使用し、酒米の「ダ イヤモンド」とも称されており、非常に高価な酒米で、岐阜県でも大切にされてきたお米です。北海道移転後も地元の 思いを受け継ぎながら醸造されています。 この酒には「酵母無添加」という特筆すべきポイントもあります。 通常、日本酒の醸造には酵母を加える必要がありますが、この新しい蔵では空気中の酵母を取り込む方法が用いられています。

また、蔵の移転の際にお酒づくりには特定の菌や酵母が欠かせなく、岐阜から移転する際、菌や酵母も一緒に移動させる等、課題はありましたが、三千櫻酒造さんは岐阜でのホーロータンク等様々な道具を再利用し、これによって、少量ではありますが岐阜のころと同じ菌や酵母を一緒に移動させることができたそうです。

最も苦労した点は、水質の変化 だったそうです。軟水から中硬水への切り替えは、製造工程において最も挑戦的な要素だったでしょう。

〆張鶴「純」


新潟県村上市 宮尾酒造


◉20年連続でプロの飲食店の大将や居酒屋、寿司屋の大将が選ぶ純米吟醸部門で一位のお酒とは?

新潟県村上市で醸す宮尾酒造さんの〆張鶴(しめはりつる)「純」についてお話ししましょう。村上市はもともと城下町で、鮭が遡上してくることで有名です。はらこ飯や酒の文化、素敵な城下町として知られています。

〆張鶴純は、日本酒雑誌で20年連続でプロの飲食店の大将や居酒屋、寿司屋の大将が選ぶ純米吟醸部門で1位に選ばれたお酒です。新潟のイメージは淡麗辛口のすっきりしたお酒ですが、実際には地域によって異なる特徴があります。村上市の〆張鶴は淡麗でうま口な特徴を持ち、酒質は非常にまろやかで落ち着いています。

一般的に、お酒は絞ってから約半年で出荷するのですが、こちらの蔵に関しては、一番下のクラスお酒でも1年間はタンクで調整するそうで、まろやかで落ち着きのある酒質になるんです。

お料理との相性についてもお話ししましょう。特にお寿司や繊細な和食には抜群に合います。少し物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、お料理と一緒に楽しむことでその実力を発揮するタイプのお酒です。

お料理に寄り添う存在、というのが良い表現かもしれませんね。弊社社長も、よくこのお酒を食事に行く際に持参していました。初めは物足りなさを感じるかもしれませんが、実際には料理との相性が良く、邪魔しないで調和します。そのために20年連続で選ばれるお酒なのだと思います。

お米は新潟の代表的な五百万石という品種で、淡麗でうまく口当たりの良いお米です。全国多くのファンに支持されており、全国の酒造でも広く使用されています。

ちなみに酒を造るためのお米と、私たちが食事に使っているお米の違いですが、酒米で造るお酒は、酒の特有の味わいがあります。一方で飯米で作るお酒は、やや柔らかい味わいを持っているため、飲みやすいお酒に仕上がることが多いです。

飯米で作るお酒は、一見敬遠される事が多かったりするのですが、酒造好適米とは異なり、お酒に加工しにくかったり、発酵が難しいんです。つまり、それだけ酒蔵の高いスキルを要するということです。

例えば東川町のななつぼしでも、難しい条件下でうまい酒を造ることができるのは、酒蔵の技術が高いからです。最近では冷蔵技術や酒造の技術が向上し、お米を10%ほどだけ磨いて醸造する、低精白のお酒も主流になってきました。これにより、製造コストが抑えられ、手頃な価格で美味しいお酒を提供できるようになりました。

こういったお酒が、最近は主流になりつつあり、酒蔵のチャレンジとしても注目されています。こういったお酒は「安く美味しいお酒を飲みたい」という顧客や市場に、支持されています。

農家のお酒


北海道旭川市 高砂酒造


◉オール旭川素材で造る思い入れのある商品。

「農家の酒」は、地元旭川市民の方々と、酒蔵、農家さんが共同で取り組んでいるプロジェクトから生まれたものです。

このプロジェクトは、オール旭川素材で日本一うまい酒を造ろうというコンセプトで、2012年春にスタートしたプロジェクトです。毎年、お酒のコンセプトやラベルデザインが異なるのが特徴で、旭川在住のデザイナー、あべみちこさんが毎年手書きでラベルをデザインしてくださっています。そのため、毎年のお酒の登場が楽しみなんですよ。

「農家のお酒」は、私たちの酒蔵では取扱3年目の製品です。以前からこのアイデアはありましたが、実際に形にするきっかけは、ある日空港を訪れた際のことでした。空港の土産物屋でこのお酒を見かけ、なぜ当店では扱っていないのかと疑問に思いました。

その疑問を営業の方に話したところ、「ぜひ卸しましょう」というお返事をいただき、こうして「農家のお酒」はスタートしました。また、「農家のお酒は田植えから酒のしぼり、製品作りの手伝い、ラベル貼り、出荷の手伝いまで、旭川市の皆さんが協力して製品化している非常に思い入れのある商品と言えます。

「農家のお酒」もまた、純米吟醸のスペックで、小仕込みながらも、大吟醸のような手間暇をかけた仕込みを行っています。お米には彗星を使用し、すっきりとした味わいが特徴で、食中酒として楽しむことができます。

田酒


青森県青森市油川 西田酒造店


◉ワインのようなニュアンスを感じられるスパークリング

青森県の油川にある「西田酒造店」さんが醸す田酒シリーズです。創業ブランドは喜久泉というお酒を醸しております。

田酒シリーズは「日本酒の原点に帰り、風格ある本物の純米酒を造りたい」というコンセプトで流通しています。紹介するのは、「MICRO BUBBLE」というスパークリングタイプのお酒です。炭酸を充填したタイプで、発酵の醸造による炭酸ガスではなく、ガスを充填しています。

キレのあるお酒で、特徴としては、通常の日本酒に使われる黄麹ではなく、焼酎などに使われる白麹で醸した日本酒をベースにガスを注入しています。白麹を使用することで、クエン酸が多く生成される特徴があります。そのため、酸味が強く、ワインっぽい柑橘のような甘酸っぱいニュアンスを感じられるようになります。

前菜などとの相性が良く、社長自らもガスの充填作業に携わっているとのことです。また、自然発酵によって醸す活性酒を作るには、にごり酒を使用する必要があります。

糖分を含んだにごりを残す方法により、液体の内部で活性化が起こり、その際、瓶の余った部分に炭酸ガスがたまり、それらがもう一度液体に溶け込むことで、酒に炭酸が生まれます。

一方、ガス充填は細かい炭酸を人の手によって酒に注入することが出来、自然発酵の活性酒はキリッとした質感、ガス充填タイプはジューシーで軽やかな感じです。

二世古


北海道虻田郡俱知安町 二世古酒造


◉「二世古」シリーズを紐解き、大人気の理由に迫ります。

「二世古酒造」さんは蔵の息子である水口渉さんが率いる蔵人が、様々な試行錯誤を繰り返しながら醸造している特別なお酒です。

蔵人はわずか4~5人で、少人数で丁寧に醸され、蔵も小さく、お酒を絞った後はタンクではなく瓶で貯蔵、年に1回のみの仕込みとなっています。非常にコンパクトな蔵で豪雪地帯のニセコ町に位置し、冬になると雪に覆われ、天然の冷蔵庫のような状態でお酒が醸されます。

水は非常に軟らかく、羊蹄山の湧き水で、近隣農家さんで作られた酒米を使う事にこだわり、道産米のみを使用します。青色のラベルの「彗星」という銘柄は、すっきりとした酒質の特別純米酒で、黄色のラベルは同じく特別純米酒で、北海道で作られた「吟風」というお米を使用しています。

今1番主流なのがこの吟風です。彗星に比べてしっかりとした味わいが特徴です。そのためコクのある料理や焼肉などに合わせても負けないような酒質に仕上がります。

また、紫色のラベルの商品は季節限定で、「きたしずく」を使用した生原酒です。きたしずくは1番あたらしい酒米で、後に紹介する「雄町米」を原料としているものです。

現在、急速に人気が広がっており、本州でもこの酒米を使って醸造する蔵も増えてきています。味わいとしては、彗星と吟風の良いとこ取りと言われています。この酒質は、吟醸酒など、ちょっと上品なお酒に向いており、バランスの取れた印象を

えぞの熊


北海道旭川市 高砂酒造


◉国士無双を作る高砂酒造が贈る二つの目銘を徹底解説。

かつて旭川は「北の灘」とまで称されるほど、沢山の酒蔵が存在し、現在稼働しているのは3軒のみとなり、その中でも最も歴史のある酒蔵が「⾼砂酒造」さんです。

代表的な銘柄は「国⼠無双」で、この酒蔵ではその銘柄を中心に酒造りを行っています。

今回ご紹介する「えぞの熊」は白と黒の2種類があり、元々、北海道の地酒を本州向けに発信するために企画されたもので、酒屋さんを通じて流通するワンランク上のお酒として造られました。

「白い方」は純米酒となっており、北海道の酒造に適した特別な米、彗星(すいせい)を使用しており、爽やかな口当たりと辛口の味わいが特徴で、通年を通して楽しむことができるフレッシュな味わいです。

生酒としても提供されており、その新鮮な風味を楽しむことができます。一方、「黒い方」は純米吟醸で、こちらは「きたしずく」という新しい品種のお米を使用し、北海道内で開発された酒造好適米の中でも1番新しい品種で、芳醇でキレのある味わいが特徴です。

また「中汲み」と呼ばれる部分を使用しており、お酒を絞る際に3段階の絞り方がありますが、その中でも最も良い部分だけを使用して純米吟醸となっております。

「えぞの熊」という銘柄に関しては、純米酒と純米吟醸の生酒と火入れの2タイプのラインナップとなっており、その製造過程では、大吟醸レベルまで手間暇を掛け、お酒に余分なストレスを与えずに作られています。


・インタビュー

池田芳彦

Ikeda Yoshihiko

苫小牧錦町にある福士商店に地酒担当とし
て8年勤務。この度、福士商店の酒屋事業の
廃業により、その事業を引き継いで年内に池田
酒店として開業を予定しております。